ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業のヒト・モノ・カネ・情報を一元管理し、業務プロセスを標準化・自動化するためのシステムです。ここでは、導入の主な理由を4つにまとめます。
SankaではERPを導入する主な理由を以下のように捉えています。
データを一元管理して、“正しい数字”を明確にするため*
業務プロセスを標準化・自動化して属人性を減らし生産性の高い組織を作るため
データを活用して、リアルタイムで経営判断やコスト・利益の最適化を行うため
内部統制・監査・IPO・銀行対応などの要件を満たすため
*特に#1に関しては、AI時代のERP導入の本質と言えます。
データがバラバラだと、経営も現場も立ち行かなくなるのはよくある話です。
ERPを入れる前によくある状態では以下のようなことが起きています:
売上:営業はスプレッドシート、経理は会計ソフト、ECは別システム
在庫:管理はExcel、倉庫は紙の帳票、発注・仕入はメール
発注:購買は専用ツール、入庫・納品確認はメール、支払いは銀行
結果として以下のような問題が発生します。
営業は請求したが入金が分からない、経理は入金確認したが請求が分からない
部署や担当ごとに数字が合わず、棚卸しや締め作業に時間がかかる・ミスが出る
ムダな外注や仕入れをして、在庫過多や利益減少が起きる
さらに2020年代は、AIが業務に組み込まれる時代です。
ただし、AIがいくら高度になっても、
データがバラけている・不正確・古い・存在しない
プロセスが人やチームごとに違う
ルールが頭の中とExcelにしかない
という状態では、AIもまともに働けないのが現実です。AI時代におけるERPの導入は、データを一元管理し、「AIが正しく働けるように、データと業務を整理された“土台”に乗せること」 が肝要となります。
→ ERP導入の一番大きな理由は、「会社の“真実の数字”を1つにするため」 と言えるでしょう。
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会社が大きくなると、同じ作業を人手に頼る運用では限界が来ます。
以下のような複雑な業務フローを想像してみてください。
受注 → 在庫 → 発注 → 出荷 → 売上 → 請求
見積 → 契約 → 納品 → 請求 → 集計 → 粗利算出
需要予測 → 計画 → 調達 → 製造 → 販売 → 請求
ありがちなケース:
「売上計上のルールは◯◯さんのExcelにしかない」
「この見積の作り方は△△さんしか知らない」
「需要からの計画は□□さんしかできない」
これは、その人が辞めた瞬間に業務が止まるリスクです。
ERPを入れる理由はシンプルに、以下の3つを実現するためです。
業務フローを「決められたステップ」に落とし込む(見える化・仕組み化)
可能な限り反復作業や人の判断が不要な業務を自動化する
新人でも、ベテランでも、誰がやっても同じ結果になるようにする(標準化)
→ つまり、人の頭の中にある“やり方”を、システムに固定するのがERP導入のモチベーションです。
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経営層が知りたいことに以下の項目があります。
今月、どの事業・どの商品がどれくらい儲かっているか
キャッシュがいつ、どれくらい増減するか
どの取引先・チャネルが利益を生んでいるか
ただ、これらの指標や実績は、バラバラなシステムだと、すぐに把握できないことが多いです。
原因としては、以下の課題が挙げられます。
ツールに散らばったデータの集計だけで毎回、数日〜数週間かかる
各部署からExcelを集めて手で加工する必要がある
データへのアクセスや権限が限られていて、リアルタイムに見れない
このような課題もERPを入れることで解決できます。
売上・仕入・在庫・人件費などを一気通貫・リアルタイムで把握できる。経営会議もスムーズに
加工いらずで部門別・商品別・顧客別の予算・実績がいつでも見える
細かなアクセスコントロールで「集計プロジェクト」や「分析の稟議」をしなくてよくなる
→ 意思決定をより早く・正確にするための基盤 として導入されます。
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会社のサイズが一定規模以上になると、避けて通れない要件が発生します:
誰が、どのタイミングで、どの伝票を登録したか
承認フローが正しく通っているか
データの変更ログが残っているか
不正・ミスが起きたとき、遡って確認できるか
Excel+メール運用では、証跡が不十分になりがちです。ERPを入れると、
承認ワークフロー(申請→承認→実行)がシステムに組み込まれる
操作履歴(誰が、いつ、何をしたか)が残る
監査・IPO・銀行審査などで説明しやすくなる
→ 「ちゃんとした会社に見られる/なれる」ための投資でもあります。
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ERPの導入理由がわかったところで、次にERPの主要な機能を整理します。
受注・購買・請求・会計などのデータを一元管理し、重複入力や数字ズレを防ぐ
顧客・商品・仕入先などのマスタを統合し、どのシステムから見ても同じ値を担保する
CRM/EC/物流/決済/BIなど外部ツールと双方向にデータ連携
(Sankaの特徴)API/Webhook/iPaaS連携に加え、AIエージェント経由で外部サービスの操作も自動化
受注→在庫引当→発注→入庫→出荷→請求→入金消込などの業務をワークフロー化して手作業を削減
承認フロー、ステータス管理、リマインダー、スケジューラで「抜け漏れ」を防止
権限ロール、操作ログ、承認履歴を残して内部統制・監査に備える
仕訳・税区分・締め処理などの会計統制を業務プロセスと接続する
部門別・商品別・顧客別の採算をリアルタイムで把握
ダッシュボードや定期レポート配信で経営のリードタイムを短縮
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まず、ERPの歴史を簡単に振り返ります。
1990年代:オンプレミスERPが普及。導入・カスタマイズはSI中心で、期間もコストも大きい。
2000年代:クラウドERPが登場。初期費用が下がる一方、業務変更や追加開発は依然重い。
2010年代:SaaS+APIで周辺システム連携が一般化。iPaaS活用で拡張性が向上。
2020年代:AI・ローコード・自動化が前提に。UI操作+API+自動実行を横断する設計が求められる。
このような流れから、今後のERPの展望として、以下のような方向性が考えられます。
入出金データや在庫・受発注履歴から、入金遅延、需要予測、粗利シミュレーション、異常を自動で検知・提案。
レポートを見るのではなく、「次に何をすべきか」を教えてくれる意思決定エンジンとしての役割が強まる。
自然言語だけでERPデータを検索・分析・操作できるインターフェースが一般化。
コア(受発注・入出金・請求・在庫・会計など)はシンプルに保ちつつ、周辺機能はAPIやiPaaSで自由に組み替える前提に。
すべてを1つの製品で完結させるのではなく、「最適なツール群を束ねるハブ」としての位置づけが重要になる。
その分、アクセス権限やログ管理、監査対応などのガバナンス機能が従来以上に重要な価値になる。
画面レイアウト、ワークフロー、帳票・レポートなどを、現場リーダー自身がノーコードで変更できるのが当たり前に。
IT部門やSIに依頼しなくても、「今日決めた業務ルールを明日からシステムに反映する」スピードが求められる。
ユーザーはインプットに対して、アウトプットがどうなったをリアルタイムで瞬時に把握・改善できる。
このように、これからのERPは「単なる基幹システム」から、「業務データとAI・自動化をつなぎ、現場の意思決定と実行を支えるプラットフォーム」へと役割を広げていくと考えられます。